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花散里

すいば94



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源氏物語 巻十一 花散里

宮中では源氏を追放しようという謀議が進んでいた。

大将である官位を剥奪されるまでに手を打たねばならない源氏に五月雨が行動を阻む。

橘の花も雨に濡れ、京はふんわりとしたその甘い香りに満たされていた。


五月雨のめずらしく晴れた雲間に源氏は麗景殿女御(れいけいでんのにょうご)を訪ねた。


たちばなの 香をなつかしみ ほととぎす

  花散る里を たづねてぞ問ふ


橘の花の散る里、この心静かな姉妹の家で花を散らす覚悟を決める源氏。


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花散る里の物語は、心静かな姉妹により光源氏を美しい姿と心のままで描ききっています。



文字で表現するのは時として壁にぶち当たる時があります。

殊に香りをお伝えするのは至難の技です。

多くの方を癒す柑橘系の香り。

そこで今回は源氏物語の一部を借用してみたわけです。

それにしても現代の発音でも「はなちるさと」とはなんて綺麗な響きでしょう。

平安時代の「は」行の発音はファフィフゥフェフォと言ったそうですが。。。


当時のように一面に漂う香りは水尾で体感したものに似ています。



私どもは、windows98の時代に「左近桜・右近橘」というテーマの帯を製作しました。

夜の6時前です。あるナショナルチェーン(全国規模に店舗を持つ呉服販売業)から「桜と橘の謂われ」を教えてもらえないかと連絡がありました。

今のようにググる時代でもなく、特に橘の謂われの資料を持ち合わせていませんでした。

知恵を絞りましたが、おぼろげの知識だけでお伝えすることはできません。

知恵を絞りに絞りに絞った挙句、閃きました。

もしかして「橘寺」なんぞというお寺があるのではないかと。


あったんですよ、これがまた。奈良に。

でも電話に出ていただけるかどうか賭けです。


御住職が電話なのに懇切丁寧に教えてくださいました。

必死にメモを取りながらキーワードは漢字までお教えいただきました。


「日本書紀」に伝わる伝説は以下のとおりです。


「橘」は古名を「非時香菓(ときじくのかくのこのみ)」と言い、夏に実り秋を経て霜に耐え、時ならぬ冬でも枝にあって、芳しい木の実という意味です。

垂仁天皇の御代(仁徳天皇の10代前)、田道間守(たぢまもり)という人物が天皇の勅命を受け常世国(「とこよつのくに」不老不死の国)に至り、やっとの思いで手に入れ持ち帰った非時香菓。しかし時すでに遅く天皇崩御後であったという内容でした。

田道間守は嘆き悲しみ、御陵に非時香菓を献じ殉じてしまいました。


橘は田道間花(たぢまはな)がつまったものだとの説もあります。


詳しくは省略しますが、裏付ける実例まで教えて頂けた。

こんな思い出も懐かしいです。


橘は花は気高い純白の花が咲き、黄金の実を結びます。


花も実も香気が高く菓子の材料としても食され、わが国の菓子のはじまりとされることから、田道間守は菓祖(お菓子の神様)とされています。


新種改良を重ねた甘く実の大きい種のない量産される果物に慣れ親しんだ現代人。

原型である橘の実は、勅令にしろ、当てもなく不老不死の妙薬を命をかけて探し求めた人の存在まで思いを巡らせると感慨深いものがありますね。


「非時香菓」、食してみたくなります。



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