当主
空蝉
すいば101
蝉がミンミンうるさい季節になりました。
気温も芝生の上の風通しの良い百葉箱じゃ
30℃台をキープしていますが絶対40℃超え
一民間人はそう思うこの暑さ。
気づけば庭の桜の枝の下側に蝉の抜け殻
上品に言うと「空蝉(うつせみ)」が。
夜中に脱皮するようです、蝉って。
最初は真っ白なんですよ、どこもかしこも。

『源氏物語』五十四帖の第二帖「帚木」。
貴人たちの女性談義「雨夜の品定め」で知られる。
ははき木の 心をしらで そのはらの
道にあやなく まどひぬるかな
光源氏
かずならぬ 伏屋に生ふる 名のうさに
あるにもあらず 消ゆるははき木
空蝉
この帖はそこそこ長編なのに最後のこの2つの和歌にだけ登場する「帚木」という言葉を
帖名に宛てています。
「帚木」は当時伝説として語られていた幻の木のこと。
ほうきのような形をして立っていたので、このような字を当てる。
信濃国(今の長野県)の園原の伏屋(ふせや)という所にあり、遠くから見るとこの木は見えるのだが、近づいて行ってみると姿を消してしまうという不思議な木のことです。
次の帖「空蝉」で、源氏が空蝉の寝床を襲い、ついに捕まえたと思ったところ、空蝉は衣を脱いでスルリといなくなっていた。
「帚木」とは空蝉のことです。
「帚木(=空蝉)の心の中も知らないで、園原の道に迷い込んでしまったのかなあ」とつぶやく源氏に、空蝉は見すぼらしい伏屋に生える帚木に自らを例える。
源氏との身分の違いに我が身の憂さを感じている姿が、伏屋の帚木とダブります。
「帚木」は、我が身を知って中の品としてのプライドを守ろうとする健気な中流の女の姿を映しだしているのかもしれない。