当主
藤袴
すいば107
このところの芳しくない空模様。
季節は秋の長雨。
雨天の晴れ間、例年より早い藤袴を観に。


万葉の時代から日本で親しまれてきた花も、今では環境省の「準絶滅危惧種」指定。
その貴重な野生種が、平成10年にここ大原野で発見され大切に育てられています。
花守の人が驚いていました。例年ならこの時期は開花してないのに現れた花見客に。
いろいろ教えていただきました。10日ほど前から咲いているそうですが、冷え込まないと花は白で淡紫色にはならないことなど。


源氏物語 巻三十 藤袴
花は夕もやとともに美しい香りをほのかに漂わす。
すらりと背の高い淡紫の花のかたまりが夕暮に沈むと秋の夕べは闇をひろげる。
夕顔の忘れ形見・玉鬘(たまかづら)は祖母の喪に服している。
ふたりは喪服であった。
玉鬘を姉と思い込んできたきた夕霧は、彼女の父が内大臣だと知ると恋の炎は燃える。
おなじ野の 露にやつるる ふぢばかま
あはれはかけよ かごとばかりも《夕霧》
「あなたと同じ野の露に濡れてしおれている藤袴です。
二人の同じ祖母・大宮の死を偲んでいるのですから、つれなくせず、私にやさしい言葉をかけてください」
夕霧は玉鬘へ藤袴の束を御簾(みす)の前からさし入れます。
優雅ではあるけれども相手の表情がわからない中での、ヒヤヒヤ・ドキドキ感いっぱいの愛情伝達方法です。
この場面、なぜ夕霧は藤袴を贈ったのでしょうか。
喪服の色と同じ藤色系の同色であったのでとの解説が多いのですが、もしかして香りの効果を狙ったのかもしれませんね。
これを香水代わりに是非使ってほしい、なんとしてでも自分に向かせたい、との魂胆かも。玉鬘二十三歳、夕霧十六歳です。
藤袴から発するクマリン(coumarin)の香り、ご存知ない方は桜餅を思い出してください。
餅を包む大島桜の葉のいい香り成分もクマリンですから。
藤袴は秋の七草の一つで、淡紫色の小さな花が枝の先に集まるように咲きます。
いにしえより「薫る草」として人々の間で親しまれており、刈り取った茎や葉は半乾きの状態にすると爽やかで快い香りを放ちます。

藤袴の香りに強く惹かれてやってくるのが浅葱斑(アサギマダラ)という蝶です。
前羽が4~6cmほどの大きさで、羽を広げると10cm前後になります。
浅葱斑を有名にしたのはその渡りの凄さ。
海を渡る蝶と言われ、1980年ごろから始められたマーキング調査により、春は南から北へ、秋は北から南へ、まるでツバメのように移動することがわかってきました。
對青軒印の藤袴図屏風は群生する藤袴を描いた六曲一雙屏風で有名ですね。

左右どちらに並べても画が繋がる仕掛けでとても洒落ています。

對青軒の落款は俵屋宗達です。
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