- 当主
おこぼさま
お絹のお話 2
おこぼさま
私どもは「お絹」を製織する絹糸を購入するのは西陣にある「原糸商」。
通常「糸屋さん」からです。
「生糸」と「絹糸」の区別は通常、繭を鍋で煮て6~7個の繭から出る糸を1本にしたものを「生糸」、その1本の糸の太さを「中(なか)」と呼び一般的なものは21中や28中です。
生糸は弾力があり強いとはいえ、蚕が吐いた糸1本では織物は織れないということをご存知の方は少ないです。
私どもで使用する絹糸は、21/2諸、21/4片、21/6諸、28/2諸、21/36片が主です。
「諸(もろ)」とは諸撚り、「片」とは片撚りを意味し、撚り合せる職業を「撚糸屋」と呼びます。そして撚り合せた生糸を「絹糸」と呼びます。
だから通常、私どもは養蚕農家から直接生糸を購入したりはしません。
ここは群馬県安中市。
西陣の原糸商から紹介してもらい遥々来ました。
駅弁の王者「峠の釜めし」の本場だと初めて知りましたヨ(ᵔᵕᵔ˶)
養蚕農家の前に桑畑もありました。

趣のある木の階段で二階に上がるとたくさんの蚕。
生まれたての蚕は「けご」と呼ばれ、わずか1〜3mm程度の大きさしかありませんが、僅か25日間で1万倍の大きさに成長しています。25日間で1万倍の大きさに成長する生き物は蚕しかないそうです。
蚕のことを「おこぼさま」と呼び
この辺りの養蚕農家では、昔は座敷で蚕を育てました。
家族は座敷を占領され廊下で寝かされたと聞きます。



蚕が繭を作る合図はオシッコを する時だと聞きました。オシッコ?( ゚Ω゚)
蚕のオシッコとは一生に一度っきりだと聞き納得しました。
そういえば、何か懐かしい匂いのするところだなと思っていたら蚕のオシッコの匂いだそうです。番茶の匂いにそっくりです。
回転蔟(かいてんまぶし)と呼ばれる回転式の繭棚に移動させ、そこで蚕の繭作りが始まります。
蚕が繭を作ろうとする時、この棚の中に入っていきます。この棚は、蚕が一箇所に集まってしまったときには、蚕自体の重みでゆっくりと回転して、蚕がくまなく棚に入るようにできています。動力を使わず、全て自然の法則にしたがって繭を育てる昔ながらの知恵です。

蚕が吐き出す一本の糸は、同じ太さの鉄と比べるとはるかに硬く強度があります。
蚕が吐き出す繭を一本の糸にほぐすと、その長さは約1,200mあります。

48時間休むことなく吐き出した糸で、多くの繭が出来上がります。
繭は棚からはずされ出荷準備へと向かいます。
春に作られた繭なので「春繭(はるこ)」と呼びます。
蚕は一年に3回繭を作ります。春に作る「春繭」、夏に作る「夏繭」、そして秋に作られる「秋繭」です。中でも春繭の糸は極上品の繭で、超高級品として扱われています。
6月に引く繭は春繭ですヨ!