- 当主
まずは杼から始まる
すいば 1
本年2017年は応仁の乱で山名宗全が西ノ陣を敷いてから550年目に当たります。
つまり「西陣と呼ばれて五五〇年」の記念すべき年になるわけです。
わたくしの座右の銘は「来往如杼」と常々申しております。
「らいおう ひのごとし」と読んでいただきます。

この語の出典は中国は北宋時代の文人・蘇軾(そしょく)の詩の一節です。
とてもエレガントな詩と評されております。
「杼」と書いて「ひ」と読むこの漢字は西陣の織物関係では読めない人もないほど有名な漢字ですが、「杼」は日本字で原典では「梭」と書き、機(はた)織りの杼のことです。
「杼」とは機織りの際、ぴんと張った経糸(たていと)が上下に開き、その間を緯糸(ぬきいと)を巻いた管(くだ)を収めたシャトル型の機(はた)道具のことで、その杼を左右に通し経糸と緯糸を組んで織物にしていくのです。
上の西陣550のロゴ中央の図柄は「杼」をデザイン化したものです。
つまり「来往如杼」とは、人と人との交流、情報交換が機織の杼が右から左、左から右へと目まぐるしく行き来し、がっちり組み込むという意味と捉えております。

この度、ブログを開設するにあたり、当主であるわたくしからのご挨拶代わりに織屋らしくまずは杼のお話から始めてみました。時代遅れなわたくしも何かの役に立ちたいという一念から時折、機織のお話や文様のお話、一元さんでは知り得ない京都人の習慣などを呟いていこうと思っております。「伝統」とは「美しきマンネリ」だと思っております。あいも変わらぬ繰り返しのようで実は新鮮な空気や水を与えていかないと枯れ果ててしまいます。550年もの長の歳月、継承していくことは「信用」と言い換えてもよろしいかと思います。
始めた以上は末永く続きますよう皆様よろしくお願い申し上げます。
カテゴリーの「すいば」とは、最近は死語になったようですが、こんな意味です。
幼い頃に近くの公園の一角にちょろちょろ水の湧き出る岩場がありました。 あるとき友に「秘密のすいば」って教えてもらったことがあります。 なるほど、足場がよくて沢蟹がいっぱいいました。 皆が行くと穫れなくなるので、なかなか他人には教えたがらない。 そんな自分のとっておきの場所を「すいば」と呼びます。My own little cornerとでも申しましょうか。
お暇な一時にでも、ふと覗きに立ち寄っていただければ幸いに存じます。
せっかくお立ち寄りいただいたのですから、足あと代わりに何かコメントいただければ嬉しいです。
当主 拝