かいもち

すいば108 鎌倉時代初期に成立と伝わる『宇治拾遺物語』は、『宇治大納言物語』から漏れた話を拾い集めたものという意味だそうで、全197話から成る。 巻一の「児(ちご)の空寝(そらね)」って授業で学んだ方も少なくないでしょう。 舞台は比叡山のお寺。 ある夜、僧たちが「いざ、かいもちひせん」というのを、児が耳にします。かいもちが出来上がるのを待って寝ないのも居心地悪く、児は部屋の片隅で寝たふりをします。 出来たところで、僧は声をかけますが、児はもう一度呼ばれてからと考え、黙ることに。 しかし、僧たちは寝ているのを起こすのもどうかと思い、声をかけません。 今一度おこせかしと、思ひ寝に聞けば、 ひしひしと、たゞ食ひに食ふ音のしければ、すべなくて、無期ののちに、「えい」といらへたりければ、僧達笑ふ事かぎりなし。 ああ、困ったことだ、もう一度起こしてくれよと思いながら寝て聞き耳をたてると、むしゃむしゃと、ただどんどん食べる音がしたので、児はどうしようもなくて、タイミングを大きく逸した時間ののちに「はい」と返事をしたので、僧たちは笑うことこの上なし。 ∞⌒Y⌒∞⌒Y⌒∞⌒Y⌒∞⌒Y⌒∞⌒Y⌒∞⌒ さて「かいもち」。 一体どのような食べ物だったのでしょう。 かいもちの由来は「かき混ぜる」という動作から名付けられたといわれます。 昔はぼた餅(おはぎ)のことを「かいもちひ(掻餠飯=かいもち)」と呼んでいた。 そう教わりました。砂糖の普及していない時代ですから塩餡だったでしょうか。 塩は甘味を引き立たせる効果がありますから。他に蕎麦がきを指すとする説もあります。 京都は明治の御一新までは都でした。

藤袴

すいば107 このところの芳しくない空模様。 季節は秋の長雨。 雨天の晴れ間、例年より早い藤袴を観に。 万葉の時代から日本で親しまれてきた花も、今では環境省の「準絶滅危惧種」指定。 その貴重な野生種が、平成10年にここ大原野で発見され大切に育てられています。 花守の人が驚いていました。例年ならこの時期は開花してないのに現れた花見客に。 いろいろ教えていただきました。10日ほど前から咲いているそうですが、冷え込まないと花は白で淡紫色にはならないことなど。 源氏物語 巻三十 藤袴 花は夕もやとともに美しい香りをほのかに漂わす。 すらりと背の高い淡紫の花のかたまりが夕暮に沈むと秋の夕べは闇をひろげる。 夕顔の忘れ形見・玉鬘(たまかづら)は祖母の喪に服している。 光源氏と葵の上との子・夕霧にとっても祖母である。 ふたりは喪服であった。 玉鬘を姉と思い込んできたきた夕霧は、彼女の父が内大臣だと知ると恋の炎は燃える。 おなじ野の 露にやつるる ふぢばかま あはれはかけよ かごとばかりも《夕霧》 「あなたと同じ野の露に濡れてしおれている藤袴です。 二人の同じ祖母・大宮の死を偲んでいるのですから、つれなくせず、私にやさしい言葉をかけてください」 夕霧は玉鬘へ藤袴の束を御簾(みす)の前からさし入れます。 優雅ではあるけれども相手の表情がわからない中での、ヒヤヒヤ・ドキドキ感いっぱいの愛情伝達方法です。 この場面、なぜ夕霧は藤袴を贈ったのでしょうか。 喪服の色と同じ藤色系の同色であったのでとの解説が多いのですが、もしかして香りの効果を狙ったのかもしれませんね。 これを香水代わりに是非使ってほしい、

夕顔

すいば106 ゚*❋⁎❈*゚*❋⁎❈*゚*❋⁎❈*゚*❋⁎❈*゚*❋⁎❈*゚*❋⁎❈*゚ 源氏物語 巻四 夕顔 光源氏は五条に住む乳母(めのと)の病気見舞に立ち寄る。 正門の開くのを待つ間、むさくるしい五条の家々を見ていた。 乳母の家の西隣の家の垣根に「白き花ぞ、おのれひとり笑みの眉を」ひろげている。 何の花かと聞くと「かの白く咲けるをなむ、夕顔と申しはべる。花の名は人めきて、かうあやしき垣根になむ、咲きはべりける」と答えた。 従者にとらせようとすると、女の子が出てきて、香でいぶしかけた白い扇を渡し、「夕顔の花は、風情のない枝なので、この扇にのせて」という。 乳母の見舞をすませ、その扇を見ると、 心あてに それかとぞ見る 白つゆの 光そへたる 夕がほの花 『あて推量ではございますが、ひょっとして、夕べのつゆのように光るひとのご光来で、夕顔の花が美しく光り輝くのは、あの光源氏さまでは』という歌が美しく書き流されていた。 むさくるしい家の女主人が、どうしてこんな上品な文字を書くのかと気にかかる。 美しすぎて、うちとけにくい上流の姫より、この夕顔の女にひたすら心が奪われていく。 水入らずの時を過ごしたくて五条に近い「なにがしの院」へと連れ出す。 広大な邸には院を預かる者がいる。が、木立は茂りふくろうが鳴いている。ふたりが やすみ、火も消えてまっくら。かたわらの夕顔の女は、わなわなとふるえ正気を失っている。 ひとを呼ぶ。やっと院を預かる者の子がくる。悪魔を祓う弓の弦打(つるうち)を命じ女のもとへ帰ると、すでに息は絶えていた。 夕顔の花、それは朝とともに萎れてしまう。 この夕顔の女も、荒